長期投資、是か非か

ある年配の投資家が言っていた。「株式投資とは長期投資が良いのだと教えられてきた。そして、それを信じて今まで運用してきた。しかし、現段階で見ると株式市場と同様に大きく資産を減らしてしまった。たしかに、良いときもあったが、最近、私が信じてきた長期投資に疑問を持ちはじめた。これなら定期預金にでも入れておけば良かった」と話していた。

日経平均は過去に高値で4万円近くあった。それから20年たった現在でも1万円以下。20年長期投資をしてもまだ資産が目減りしたままです。これで長期投資が良いと言えるのでしょうか。疑問がわくのも当然かもしれません。

昔は、たしかに長期投資の成果は大きかったと思います。その理由として、当時は額面(当時は50円)での株主割当増資が主で、株主は株数増加の恩恵が大きかったこと。それと、日本が高度成長経済で業績が大きく伸びたことによる恩恵が大きかったと考えます。

ところが、昭和40年半ばから完全時価発行公募増資となって様子が大きく変わってしまった。また、日本経済も成熟期に入り、コンピュータの発達とともに情報化時代となり、商品のライフサイクルの短期間化、消費者の嗜好の多様化などにより経済成長が鈍化傾向となってきました。

これらの要因により、長期投資のパフォーマンスが振るわない結果となっているのでしょう。それでも長期投資の神話が崩壊するとは思いませんが・・・。

森羅万象とどまることを知らず、すべてのものは常に変化しています。同様に経済も日々変化しています。おのずと経済をはかる尺度も変えていかなければならないと思います。

私は常々思っています。ビジネスにおいても投資活動においてても大切なことは、そこにある「時代背景」を読むことであると考えています。時代背景を無視してはビジネスでも投資活動でも成功することはできません。

人間はある程度、歳を取ってくると今までの積み重ねた経験や体験により、現在の世の中を判断します。そのときに現代社会の矛盾や間違いを批判し始めます。それは、自分自身が過去において体験したことと現在を比較しての批判です。過去の体験がすべて正しかったかのように・・・。

体験は過去であり、過去の成功体験はすでに過去のものです。その体験がすべて現在に通用するとは限りません。世の中は常に変化しています。現在は現在に通用する尺度で見る必要があるのです。過去の体験は体験として尊重しつつ、現在の現象は現実と受け止め、それらを的確に掴む必要もあるのではないでしょうか。

団塊の世代が60歳台となり、今後、その人たちに長期投資が良いといっても、20年後に、その儲けたお金で何をするのでしょうか。人生を楽しむと言っても・・・。

長期投資を勧める評論家達は、現在の長期投資の成果をどのように見ているのでしょうか。現在は100年に一度の大チャンスなのだから、ここでもう一度買いに入ることですよなどと勝手なことを言う。すでに全財産をつぎ込んでしまっているので、新たな資金は出せないと言うのに・・・。

また、彼らは分散投資を勧める。分散されたポートフォリオを長期にわたって保有することで本当の効果がでるのですなどと言う。その分散方法も外国の株式や債券、外貨に分散するのです・・・と。そう言われても国内の株式投資でも大変なのに、いまごろになって海外の株式や債券、外貨などと言われても分かるはずもない。

これらも結果論であり、後付では何とでも言える。たしか、あなた(評論家)は国内の株式投資専門ではなかったのでは・・・。あなたは時代背景を的確に掴んでいますか・・・。

決して長期投資を否定するものではありませんが、上記のように以前から比べると、長期投資の効率が低下しているのは事実です。

では、どのような投資手法が良いのだろうかと迷ってしまうところですが・・・。私が考えるに、たとえ株価が半分になっても、たとえ2倍になったとしても運用し続けることができる投資手法、そして、パフォーマンスは別として、年次決算で必ずプラスの成績で終わる投資手法、これがベストではないかと考えます。

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リスクを回避すること

投資にはリスクが付きものである。これらについては周知の通りですが、では、リスクを回避するにはどのような方法があり、また、どのように利用するべきなのでしょうか。

ご存知のように、投資における一番のリスク回避策は「損切り」です。「利は損切りにあり」「見切り千両」などと言われるように、損切りなしで長期間にわたり収益を上げることはまず不可能でしょう。投資初心者は、この損切りができず悩み続けています。

投資家は常に「どこかに良い投資手法はないものか」と探し回っているようですが、損切りができなければ、どのようなすばらしい投資法であっても収益を上げることはできませんし、投資家の資格などありません。損切りができて初めて投資家と言われるようになるのです。くどいようですが・・・。

投資において、損切りが一番重要であることは十分承知しているものの、今回のような金融危機による大暴落では、すべての保有株が損切りとなってしまった投資家も多かったのでは・・・。これでは、損切りの大切さは分かっていても金銭的、心理的なダメージは非常に大きなものとなり、投資に対する意欲も減退してしまうのではないでしょうか。

では、損切りをしつつも金銭的、心理的にあまりダメージを受けない方法はないものでしょうか。投資をビジネスと捉えた場合、やはり、そこに継続性が求められます。「継続なくして利益なし」「継続は力なり」と言われるように、継続して利益を積み上げるスタンスを取らなければなりません。

そこで登場するのが「ヘッジ」という考え方です。リスクヘッジというのが正しい言い方ですが「ヘッジする」という言い方でリスクヘッジすることを示します。

たとえば、株をたくさん保有している状況で、株式市場全体の下落が続きそうだと考えたとします。そのような場合、日経平均先物を売ったり、日経平均のプットオプションを買ったりすると、保有株が下落した際に、損失がある程度相殺することができます。

また、割高と思う株を売り、割安と思う株を買って、買い建て金額と売り立て金額を同程度にする戦略もリスクヘッジ型の投資法のひとつと言えます。

個人投資家においては、リスクヘッジをするといっても日経平均先物を売ったり、日経平均のプットオプションを買ったりすることは、知識や技術面において早急には難しいでしょうから、ヘッジというものを理解する基本的なところからスタートするのはいかがでしょうか。

ヘッジ売買の一番シンプルな手法は、やはり「サヤ取り」でしょう。サヤ取りとは、割高と判定した銘柄を売り、割安と判定した銘柄を買って、買い建て金額と売り建て金額を同程度にして運用する手法です。これらは、ペア・スプレッドやアービトラージなどと呼ばれています。

このような手法であれば、大きな利益は期待できないものの、堅実に利益を積み上げることができるでしょう。これらにより、相場変動に左右されず、継続的な運用が可能となります。まさしくビジネスとして最適な投資手法ではないでしょうか。

これらを更に発展させた手法にマーケット・ニュートラルと言う手法があります。この手法は、その名のとおり市場中立戦略です。割高と判定されるものを売り(ショート)と同時に割安と判定されるものを買い(ロング)、収益の機会を待ちます。多くの銘柄により構成された売り銘柄グループと買い銘柄グループに分け、ヘッジすることにより市場変動に左右されない多彩な売買が可能となります。

更に進化させた手法にマーケット・フォロー型の手法があります。基本的には、マーケット・ニュートラル手法と同じようにヘッジを行いながら売買するものですが、異なる点は、市場の変動を積極的に取り入れ、売り(ショート)と買い(ロング)の資金量を市場変動に合わせながら運用するものです。

以上のように、投資手法には裁定取引のように安全性の高い、リスクを回避しながら安定的な収益を上げていく、さまざまな手法があります。これらの手法は、たとえ投資資金量が大きくなっても、精神的なストレスをあまり受けずに運用できるという魅力もあるのです。

今後は、旧態然とした従来の当て屋的な売買から脱却し、大きなリスクを回避して、安定的に運用ができるリスクベッジを取り入れた投資手法をお勧めいたします。

◆リスクヘッジを取り入れた投資手法の詳細については、拙著「ロング・ショート 戦略、勝利の方程式」(日本実業出版社)に記載されています。

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損切りは逆指値で

相場の乱高下に対しても「ヘッジ」「分散」「ロスカット」の基本スタンスを持って対処すれば、何も怖くはないはずです。あとは実行あるのみです。

株式投資の初心者でもない限り、これらの基本スタンスは理解しているはずです。特に、ロスカットなどの必要性は誰でも知るところです。しかし、わかってはいるができないのも投資の世界です。

では、これらの決断をスムースにできる方法はないのでしょうか。知識があっても最後に腰砕けとなっては、すべてがご破算になってしまいます。

これらの決断をできるようにするため、精神修行をしますか?、仏門に入って座禅でもしますか?、それとも滝にでも打たれますか?。実際に、これらの苦行を行った投資家もいるようですが、このような精神修行を行っても相場にはまったく通用しません。投資の世界は別次元のものなのですから・・・。

テクニカル分析を採用している投資家は、まず株価チャートを見ます。そして、あらゆる角度から検討し仕掛けの決断をし、仕掛けに入ります。ここまでは、あまり悩むことはないようです。同時に損切り幅の設定などもします。

仕掛けが無事済むと、毎日株価チャートを眺めて、あれこれと独り言を言います。ここで、株価が仕掛け値を割り込むようなことがあれば、頭を抱えながら沈黙します。そして、気を取り直して問題点を洗いなおします。「業績には問題ないので、一時的な現象か、それとも・・・」。

しかし、仕掛け値を大きく切ってくると考えが一変します。まず、当初設定した損切り幅と見比べます。「まだ損切りのラインまできていないので・・・」。しかし、非情にも損切りラインを大幅に下回ってくると「損切りしなければいけないのは分かっているのだが・・・」となり、自分を納得させるかのように、あれこれと損切りしない理由を捜し求めます。「ここの下値抵抗線まで頑張ってみよう」などと。

これらの損切りが1、2銘柄程度ならあまり悩まずできるでしょう。しかし、今回の大暴落のように、持ち株すべてが一挙に損切りラインを通過してしまうとパニックに陥ってしまいます。

一般的には、このような状況でなぜ損切りができないのでしよう。今度こそはと思ってもなぜかできないのです。これらを解決する方法はひとつあります。それは、仕掛け時に逆指値の注文を同時に出しておくことです。逆指値のできる証券会社は限られておりますが、現在では、カブドットコム証券やマネックス証券、楽天証券などがあります。しかし、せっかく逆指値をしても、あれこれ迷って変更したり取り消したりしては元も子もないのですが・・・。

また、損切りが実行できない理由として、これは誰でもすることですが、仕掛け後に仕掛け銘柄の推移を株価チャートで見続けるということも原因のひとつとして上げられます。これらは心理面からですが、仕掛け後の株価の推移を見続けると、どうしてもその銘柄に思い入れが強くなり、何かの理由をつけて損切りができなくなってしまうという投資家特有の心理が働くようです。いずれにしても、損切りができて初めて利益の出せる中級者となれるわけですから・・・。

これらの問題を振り返ってみると、まず、「損切りは機械的に逆指値で注文をしておく」については、仕掛け後は投資家の感情は一切入らない。また、株価チャートなどを見続けると感情的な思い入れが強くなり、損切りができなくなるので、「感情を排除するため株価チャートは見ないことにする」。つまり、これらは投資家の感情を排除して機械的に損切り処理を行うと言うことに他なりません。

と言うことは、投資家の感情を断ち切るほど相場はうまくいくということになりませんか。逆に言えば、機械的売買が成功への近道と言うことになりませんか。相場で一番難しいことは「投資家の感情のコントロール」であるということは何度も述べています。

少々強引な結論ですが、投資の究極は、投資家の感情を排したシステム売買に行き着くものと考えます。たとえ、裁量的な売買であっても、確たるルールと揺るぎない決断力があれば、それも立派なシステム売買と言えるのではないでしょうか。

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