損を受け入れる

投資家は誰でも自分に合った投資手法を探し出そうと必死です。それがテクニカルであれファンダメンタルズであれ、投資家の資金量や投資家の性格に合った投資手法で売買すればよいわけです。

ただ、ここで注意しなければいけないことは「相場には何があるか分からない」ということを前提に売買システムを構築しなければなりません。暴落が起こらないという保証は何もない。投資手法はこれらを考慮して構築すべきです。

万が一、暴落などに巻き込まれると、投資理論や分析手法など一切機能しなくなります。投資家もパニックになり、何をしているのか自分でも分からなくなります。時間が経過して、あの時、何を考えていたんだろうと思い返しても思い出せない。

このような経験はなかったでしょうか。投資経験が浅い投資家はあまりピンとこないかもしれませんが、投資とは継続していくものであり、長い投資期間の間には考えもしなかったような相場展開が一度や二度は必ずあります。投資市場は甘くはないのです。

ある退職者が私のところに来て「今まで投資経験がないが、退職金で少し株式投資をしたいんだが・・・」と言う。私は何を勘違いしているのだろうかと思った。投資市場を甘く見すぎているようだ。

人は「投資家は楽して儲けている」などと批判的に言う。とんでもない話だ。現在投資活動を実践している投資家には理解していただけると思いますが、私から言わせて頂ければ、投資の世界は一般社会で働いているより何十倍も厳しい世界なのに。

私は今まで「投資を始めたいんだが」という人に投資を勧めたことはない。特に年配者に対しては「老後を楽しく過ごしたいなら絶対に投資の世界に入ってはならぬ」と言っている。

会社勤めなら人一倍頑張れば給料も上がるだろう。少し休んでも給料は下がらないだろう。しかし、相場の世界はそうはいかない。どれだけ頑張っても損は出る。何の保証もない。

投資経験の浅い投資家は損が許せない。自分の決断において実践した投資で損失を被ることは自己否定のように感じる。そして葛藤が始まる。投資の世界は平常心で対処しなければならない。それでも損は出る。ましてや損失が積み上がってパニックになっては勝てるわけはない。

一般社会では「損」という概念は少ない。買い物で「慌てて買って損をした。もう少し待てば安く買えたのに」、ぐらいはあるかもしれないが、相場の世界とは大違い。相場の世界では持ち出しの実損となる。

一般社会では「持ち出しの実損」というケースはめったにないだろう。と言うことは、実損の体験がないということになる。そのような人が投資市場に参入して、はじめて持ち出しの実損となれば、経験がないのでパニックになるだろう。

特に、主観的や感情的な売買では精神的ショックも大きいだろう。投資で損が出ることは頭では理解しているだろうが、実際に損を体験すると投資家の潜在的な性格が表に出てくる。そして、自分でも気づかなかったような自分自身の性格を知ることになる。

このように相場の世界は一般社会では経験しないようなことが起こる。投資では損は必ず付きまといます。そのためにも「損を受け入れる」という気持ちをあらかじめ理解しておかなければなりません。その心の準備が投資家の必須のアイテムになります。

余計な苦言を呈したようですが、私自身の反省とともに相場の本質(損)をしっかりと見つめて投資の原点に立ち返り、一年を締めくくりましょう。