虎の子の資金を失わないように

一般的に、家を買うために銀行から住宅ローンを受ける場合、景気動向や金利情勢により多少の変動はあるでしょうが、通常、頭金は20~30%の現金を入れて購入するものでしょう。

頭金の20~30%は、長年培われてきた経験則やデータに基づいてはじき出されたもので、双方にとって無理のないところなのでしょう。これらにより住宅ローンで家を買う立場の人のレバレッジは、3倍から5倍ということになります。

貸出先である銀行も、この程度であれば債権の回収が可能と踏んでのことです。しかし、デフレが続けば、その担保となる土地などが値下がりし、担保割れということも起きてきます。

担保割れとなれば、債権の回収ができなくなる可能性が発生し、時には追加担保を要求されることもあります。このように景気動向によっては、貸出先である銀行側にもリスクが発生してきます。

一方、借り入れ側においても、景気低迷により収入が減少し、ローンの返済が危ぶまれる可能性も発生します。購入した土地が値下がりすれば、自宅を処分しても借金だけが残るということにもなります。最近は、住宅の競売が増加しているとのニュースも聞かれます。

このように、景気低迷となれば、貸し出し側、借り入れ側双方が痛手を被る結果になります。以前のリーマンショックは、このようなサブプライムローンをきっかけに発生したものです。資本主義は、緩やかなインフレ状態の中でしか効率的に機能しないものです。

景気低迷により金利も低く抑えられているため「利息も少ないし、今後のために何かに投資しなければ」という考えで、投資市場に参入してくる投資家も多いようです。しかし、金利は景気動向により決定されるものであって、現在のように、消費者物価もあまり上がらない状況では、あえてリスクのある投資などには向かわなくてもよろしいのではないでしょうか。ミイラ取りがミイラにならないように・・・。

さて、上記の解説は、レバレッジが3倍から5倍でも景気動向によっては、双方にリスクが発生するという説明ですが、なぜこのような説明したかと言いますと、実は、私がある会合に出席して感じたことについて説明しようと思ったからです。

その会合は30代が中心の投資家の集会でした。いろいろと話を聞いているうちに感じたのですが、それは「株式投資」の話がほとんど出てこないということです。話の中心は、「オプション」「FX」「先物」、更には「仮想通貨」「CFD」に関することでした。その主催者にも聞いたのですが「最近は株式投資は少なくなっているようです」との話でした。

オプション、FX、先物、仮想通貨、CFD等は、小資金での売買が可能であり、非常に大きなレバレッジでの取引ができ、大儲けが期待できる商品でもあります。つまり、ハイリスク・ハイリターンの取引となります。

会場では、それらについて皆さん得意げに話をしていました。たしかに書店に行っても、オプション、FX、先物、仮想通貨などの書籍が幅を利かせているのは事実ですし、証券会社も一生懸命にセールスしているようです。投資の世界も常に進化し、金融派生商品などもどんどん開発されてきていますので、当然の傾向なのかも知れません。

そこで私は尋ねてみました。「株式投資はどうですか」と。すると「株はかったるくてやってられないよ。買ってじっといつまでも待ってることなんかできないよ。儲けも少ないし・・・」との返事が返ってきました。

最近の若い投資家は、このような考えでオプション、FX、先物、仮想通貨などを中心に売買しているのかなあと思いました。いろいろと参考になりました。しかし、私は直感的に感じました。「危険な傾向だ」と・・・。オプション、FX、先物、仮想通貨などの本来の利用の方法を理解しているのだろうかと。

若い年代の人は動きが機敏であるし、デイトレードなどで売買を行っても、その反応は早く、思った価格での売買も可能でしょう。また、集中力もあるし、モニターとにらめっこしての長時間の売買も可能でしょう。それより何よりも、リアルタイムに動く変動が刺激的なのでしょうか。

私が感じたもうひとつは、若者ゆえにその投資資金は少ない。少ない資金で低い利回りでは利益も小さく物足りない。そのため、いきおい大儲けを狙い、レバレッジを大きくかけることのできる商品の売買に走るのではないか・・・。かつては、私もそうであったように、若い投資家の気持ちは理解できる。

しかし、上記のようにレバレッジが3倍から5倍であってもリスクは生ずる。レバレッジもほどほどにしないと取り返しのできないことにもなりかねない。そして、それらの商品の正しい利用の方法も・・・。これらのことを十分頭に叩き込んでから売買していただきたいものです。

老婆心ながら、「急いては事を仕損ずる」「急がば回れ」ということわざがあるように、あせらず足を地に付けて売買すべきであると思うのですが・・・。オプション、FX、先物、仮想通貨などは、それなりの専門知識を必要とします。「大儲けかできるから」などと安易に考えていると大怪我をすることになりますよ。

株式投資家が市場に参入して退場するまで4、5年と言われています。FXなどでは、退場するまで4、5ヶ月とも言われています。知識も乏しく、投資金も少ないのでは、すぐに強制退場させられます。これらを裏付けるかのように、今回、会合に集まったメンバーは以前の半分以下であり、出席したメンバーも大半入れ替わっていた。

投資市場は、そんなに甘いところではありませんよ。ブームに煽られ、証券会社の甘いささやきに乗せられて、虎の子の資金を失わないように・・・。

「ブームはバブル」なのですから・・・。