酒と女とレバレッジ

前々回および前回のコメントの『「危険な傾向だ」と・・・』について、投資家の皆さんから再び多くのご意見を頂きました。このように、反響が大きいということは、いかにこれらの金融派生商品で売買されている投資家が多いかということの裏返しでもあると思います。

実際に自分が金融派生商品で売買しているので、このような内容の解説に少し怒りと不安を感じたのかもしれません。そこで、これらのテーマについて、もう一度解説してみたいと考えました。これらについて私の本音の部分で説明いたします。

時代というものは、その良し悪しにかかわらず、常に一定の方向に向かって進んでいくものです。現在で言えば、温暖化の問題や環境問題など、世界中がこれらの問題を解決するべき議論がなされています。

過去には、第二次大戦に向かって、国民が一丸となって突入していった経過においても同じことが言えるのではないでしょうか。このように、世界は、あるいは国は、善悪は別として、ある程度、ある一定期間ひとつの方向に向けて進んでいくものです。

これらの結果、常に行き過ぎが起こり暴走することもあります。リーマンショックにおける金融危機なども同様ではないでしょうか。

金融派生商品も同様に、その良し悪しは別として、時代のニーズであり、現在の金融界のひとつの方向と受け止めることになります。それらの結果は、今後の歴史の中で結論付けられることになるでしょう。

私は、常々申し上げておりますが、規制や倫理観の無い「自由」は「暴走」し、最後には「崩壊」という道を辿ることになると・・・。資本主義の基本は自由経済です。しかし、資本主義の発展とは、技術の向上や資本の蓄積によってもたらされるだけではないのです。

昔の話になりますが、共産主義のソビエト連邦が崩壊し、当時ロシアのエリチェン大統領が資本主義に転換を図りました。そして急激な技術革新や資本の蓄積にまい進しました。その結果はいかがでしょうか。

技術革新や資本の蓄積はある程度できたものの、いまだに経済は低迷している状況にあります。結果的にマフィア経済になってしまったのです。何がいけなかったのでしょうか。それは資本主義の根幹である技術革新や資本の蓄積のほかに、資本主義における高度な倫理観がなかったためです。

資本主義の倫理観とは規律や法令順守や自己規制、モラルであり、これらが欠如していれば資本主義国家は成り立たないのです。投資においても自己規制やルールの遵守を怠れば暴走し崩壊を辿ることになるのです。

投資は金融派生商品のように高いレバレッジでの運用が可能な商品があります。これらのレバレッジは、投資家の判断により自由に設定できます。しかし、金融派生商品に限らず投資では、そこに投資家のよほどの自己規制がなければ、必ず「自由」→「暴走」→「崩壊」を辿ることになります。

面白いことに、最近の話題に、身を滅ぼすものは「酒と女とレバレッジ」とまで言われています。反面、これらを上手に使いこなせれば、これ以上の幸せなことはないとも言えますが・・・。「酒と女とレバレッジ」は、諸刃の剣でもあるのです。

『「危険な傾向だ」と・・・』について、私の心配として、前回ご説明しましたように、これらの商品を単独で売買している投資家の多くが市場から退場(私の知る限り)して行ったという事実がひとつ。

もうひとつは・・・、これが私の本音の部分です。金融派生商品は、小資金で高いレバレッジでの売買が可能ですが、これらの売買を小遣い程度の小資金であれば、たとえ損をしても生活に支障をきたすことはないでしょう。また、資金をためて再チャレンジすることができます。

しかし、これらを大きな資金で本業として運用するとした場合はどうでしょうか。本業を別に持ち、余力資金で売買しているには、金融派生商品も刺激的で面白いと思います。たとえ負けたとしても逃げるところがあるのですから・・・。

しかし、大きな資金で、これらを生活の糧とした場合、金融派生商品を単独で、しかも高いレバレッジで運用できるかということです。私はこの点を強調して言いたいのです。もし、投資で生活をしていたとすると、万が一、失敗したら、もうどこにも逃げるところはないのです。私の本音はここにあるのです。

ネガティブな解説で申し訳ないのですが、以前に、外国(イギリス)の銀行でカリスマと呼ばれたトレーダーの収益が、その銀行の収益の半分を稼いでいたという話を聞きました。しかし、そのトレーダーが、ちょっとしたつまづきから巨大な損失を被り、結果的に、その銀行を倒産させてしまったという実際の話があります。やはり、これらも金融派生商品の単独の売買だったようです。

金融派生商品の悪い面ばかり書き綴ってしまいましたが、金融派生商品も本来の正しい利用であれば、その限りではないことも申し添えておきます。

金融派生商品に限らず、投資の世界は、風船と同じように、ある程度のところまで膨らまして終わりにすればよいのですが、人間の欲には限りがないように、膨らましすぎればいつかは破裂してしまいます。投資とは、このようの人間の欲(弱い)の部分を突いてくるものです。

では、なぜ金融派生商品は高いレバレッジが可能なのでしょうか。その理由については、あまりご存知でない方も多いかもしれません。株式はレバレッジが3倍程度であるのに対し、金融派生商品は何十倍もの高いレバレッジが可能です。その差には何があるのでしょうか。それは、そもそもその利用方法が「保険として利用するべきものである」という理由からです。

火災保険を考えて見ましょう。たとえば家屋に2000万円の保険を掛けたとしましょう。一般に、その保険の掛け金は年間数万円といったところでしょうか。万一のことがあれば、掛け金数万円で2000万円の保証が得られるということになります。そのレバレッジは相当なものです。

同様に、金融派生商品は保険の役割をするものですから、少ない資金で大きなレバレッジを効かせることが可能となるわけです。くどいようですが、金融派生商品の本来の利用方法は、ヘッジとして利用するために開発された商品なのです。ある意味では、掛け捨ての保険と考えることも・・・。

何事も、その利用方法を正しく理解して使用しなければ本来の機能を発揮できないものです。正しく利用しなければ、たとえ、一時的に収益を上げたとしても長くは続かないということです。

これからも長く投資の世界で活動して行きたいと考えるならば、これらの点について深く理解し、正しく運用していただきたいものです。

私は、このように投資活動を長期的展望に立って「投資の世界で長く生きていく」という視点から解説しています。当コメントは、今後も常にこのような考えに沿って解説して参りますので、何卒ご理解いただきたいと思います。

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