「損」から学ぶ

私が株式投資関係の仕事をしていると知ると、個人投資家から必ず聞かれることがある。「これから相場は上がりますか、それとも下がりますかね」と。また「儲かる銘柄は何かありませんかね」と。私が「分かりませんねえ」と返事をすると、その尋ねた人は、そのあと相場に対する自説を延々と語り始めます。

また、知人が相場の上昇を見てか「株式投資を始めたいんだが」と聞いてくる。私は、必ず「やめておいた方がいいよ」と返事をする。すると知人は、やはり投資に対する知識が豊富であるがごとく自説をとくとくと話し始める。私はいつも聞き役である。

私は今まで、そのような問いかけに賛同する意見を述べたことはない。なぜなら、彼らの自説を聞いて直感的に「これでは無理だ」と感じるからであり、また、友人を失いたくないという気持ちからでもある。

最近、彼らの噂を聞いた。「○○は、千万円単位で損をしたらしいよ」と。また、「○○は、音信不通だよ」などと、さびしい限りです。もっと厳しく止めておけばと思いつつも、余計なお節介とも・・・。

投資市場に大いなる夢を抱くのは結構なことですが、多くの人は市場の本当の怖さを知らなすぎる。「老後のために少しでも足しになれば」「退職金が出たから」などと、その考えが安易過ぎる。本音の部分では「生き馬の目を抜く市場を何と心得ているか」と問いたい気持ちです。

私は、そのような問いかけに「何もしないで、貯金しておいたほうがいいよ。物価も安定しているようだし・・」と答えています。もし、投資市場に参入するなら知識や技術を習得するなどの相応の準備と努力をしてから参入していただきたい。

しかし、投資知識を得たからといって儲かるわけではない。投資市場は学歴主義ではありません。もちろん知識は必要ですが、投資の世界は知識の上の次元にあることを理解しておかなければなりません。

プロスポーツの世界などを見ても、スポーツで稼げる人は、ごく一部でしかない。プロを目指す多くの人たちは、夢を抱くも夢破れて去っていく。プロのアスリート達もそれまでの過程は、血のにじむような努力を重ねてきたに違いない。そして、稼げるプロのスポーツマンになったのである。

これらに対して、投資家はいかがだろうか。投資市場に参入するにあたって、どのような勉強をしてきたのだろうか。はたして、血のにじむような努力を積んできたのだろうか。プロのスポーツマンと同様に投資の世界で稼げるのも、ごく一部でしかないのに・・・。

しかし、現実を見てみると投資を学ぶのに、それ相当の環境が整っていない。今は金融の時代だと言うのに・・・。これから大学に行って経済学を学びますか?。大学には高名な経済学者がいるものの、大学自体がデリバティブなどに手を出し大きな損失を出している。経済学者達は何をしていたのだろうか。

経済学者が投資の世界で成功するだろうか。私も大学で経済学を学んだ一人ではあるが、今では何を学んだかさっぱり覚えていない。投資の世界は、理論だけではなく、更に統計学、心理学、そして実践と、多岐にわたり学ばなくてはならない。投資の世界は異次元の世界であることを理解しておかなければならない。

では、書店に並んでいるノウハウ本ではいかがだろうか。それらの書物も以前から当欄で説明したとおりです。出版社は、その内容はともかく、たくさん売れればよいということから、いきおい、それらの本のタイトルも人の目の引くものになる。

では、ウェブサイトはどうだろうか。これらはウェブサイトの特徴でもあるが、ブログのように作者の姿が見えてこない。ハンドルネームなどといって、その正体を隠しての発言が多い。「こんなもの誰が信用するか」と思いつつもつい見てしまう。情報が氾濫していて、その真偽の判断が付かない。

このように、現状では投資について真に学ぶところも学ぶ書物もない。投資の世界には「これが正しいという答えはない」というからなのだろうか。それとも、他人の損は自分の利益と考えるからなのだろうか。

このような状況下、環境下では、たとえ投資金を持っていても、投資市場で利益を上げていこうとするには現実的に無理がある。とにかく、実践で学びなさいというのだろうか。実践して投資金が底をついたらどうすればよいのだろうか。

話が堂々巡りになってしまいましたが、私にも結論は出せない。わからない。ただ、私の長い投資体験の中から、こうすればよかったという反省点はある。

そのひとつは、投資の世界に足を踏み入れなければ良かったのではないかと・・・。しかし、これは投資の世界に入らなかったら、今頃どうしていたかと考えると、良かったか悪かったかの結論が出ない。

もうひとつは、市場に参入して分かったことですが、それはやはり「リスク管理」「リスク・マネージメント」の重要性をつくづく感じました。一番辛かったのは、たくさんの引かれ玉を持ったまま暴落に遭ったことです。立ち上がれないほどの辛い思いをしました。

新規参入者や初心者は、市場での大儲けを夢見て売買を始めますが、上記のように、投資を学ぶ環境の無い現状では、投資技術も知識も少ないはずです。

そこで、私の体験からですが、たとえ投資知識が少なくても、リスク管理、つまり「損切り」を徹底すれば、長い間、市場にとどまることも可能となるはずです。そうすれば、その間に実践で多くの経験や体験を積むことができるはずです。

何事でも、実践でのたたき上げほど強いものはない。老婆心ながら、くれぐれも私の二の舞にならないように・・・。

投資の世界では、その知識は広範囲にわたります。しかし、我々個人投資家では、これらにも限度があります。まずは、投資で一番重要なことから学ぶべきではないでしょうか。

個人投資家が投資を何から学ぶかは現状では難しい環境にありますが、私が実体験を通して言える事は「損」から学ぶことがベストではないかと考えています。

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